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2023J1第1節 川崎フロンターレvs横浜F・マリノス プレビュー

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最近の川崎フロンターレ

昨季、最後の最後までマリノスと優勝を争った川崎。
今シーズンを迎えるにあたっての結果目標は、当然王座奪還というところになるだろう。

鬼木監督も就任7年目となり、れっきとした長期政権といえる。
今シーズンもスタイルは大きく変えない。あくまでも過去6年から地続きのシーズンとなる。

川崎にとって2022シーズンは、連覇した2020、2021シーズンと比べてもかなりキツいものであった。
課題は、田中碧や旗手玲央の海外移籍によって生じた中盤の強度不足。そもそも仕組みとしてではなく、起用する選手の特徴・強みによって保たれてきたものであり、相次ぐ主力選手の海外流出の影響をモロに喰らってしまったといえる。結局、鬼木監督が志向する速攻とポゼッションのハイブリッドをシーズン通じて、かつ、誰が出ても維持することは、難易度の高い課題だったようだ。この点、シーズン後半になって橘田がIHのポジションに定着して、一応の解決を見た。

また、絶対的司令塔・家長は健在で、全試合出場という獅子奮迅の働き。彼の存在だけで「川崎のゲーム」にしてしまう存在感は、終始川崎に安定的な勝ち星をもたらした。

この文脈で迎える2023シーズン、各報道でさかんに言い伝えられているが、鬼木監督は新しい形に挑戦しているようだ。
当然練習を見ているわけではないため、ディテールは把握しかねるが、どうやら4-3-3→3-2-5の可変に取り組んでいるらしい。しかし、昨季の文脈を踏まえると、なぜ新しい形にトライしているのか、また、それはどのような形かはある程度推測できる。

以下、解像度の高い妄想を書き記す。

なぜ新しい形にトライしているのかというと、件の中盤の強度不足を補うためと考えるのが妥当である。
そもそも独力で広大なスペースをカバーできる選手がいなければチームとしてスピーディーなフットボールが体現できないということはない。この点、鬼木監督は中盤の人数を増やす、つまり仕組みでもって、一人ひとりの担当領域を小さくしながら広大なスペースをチーム全体でカバーしようとしているのではないか。右SBの山根を中盤の位置に移動させる利点は、ここにある。
特にIHを務めるであろう脇坂と橘田にしてみれば、自らの背後に1枚のアンカーだけしかいないのと、逆に山根と合わせて2人がいるのでは、前へボールを奪いに行く意識に差が出るだろう。

以上のことから、可変システムは非保持のためという性格が強いと見る。
逆に保持で言うと、昨季同様、前線3枚の特徴・特性から逆算した前進になる点は変わらないだろう。時間を作り、ポゼッションにリズムを生み出す家長、スピードと突破力で速攻の急先鋒になれるマルシーニョ。大エース、レアンドロ・ダミアンが欠場する序盤戦は、必然的にこの2人に頼る部分が大きくなるはずだ。

 

試合展開の予想

お互いに相手を押し込みたいチームである。

見どころとして2点を取り上げる。

橘田の起用法から窺える川崎の狙い

その中で、マリノスのやりたいことは明確。いつも通り右サイドを起点に、中央→左サイドへと展開し、エウベル⇔永戸ラインのコンビネーションで打開していく。気になるのは、これに対して川崎がどう出てくるか。

参考までに、2022シーズンの川崎は、高い位置でボールを奪うことよりもとにかく縦幅をコンパクトにすることで試合のテンポを落とし、マリノスが使いたいライン間のスペースを明け渡さないことを徹底してきた。しかし、これは中盤の強度不足による、いわば苦肉の策とも考えられる。現に、2021シーズンまでの同カードのゲームでは、前から奪いにきていた。特に8月の等々力のゲームは、コロナの集団感染等の影響で、試合をするのがやっとの状態であり、かつ優勝争いを見据えたときに、必勝を期すゲームだったことを考えれば、本来志向するスタイルを捻じ曲げてでも目先の勝利を求めるのは当然といえば当然であった。
この点、今回のゲームでは、橘田をIHで起用する公算が立つことから、川崎は、マリノスがビルドアップの起点にしがちな右サイドに誘導し、橘田が襲い掛かる構図を作れそう。そうなると、マリノスとしてはこれをどう剥がすかという課題に直面する。川崎のDFラインの裏をちらつかせながらライン間を突くことができれば、問題はないのだが、ここはいかに。

逆に、もし橘田をアンカーで起用してくる場合は、2022シーズン同様、ミドルブロックを組んでライン間を消しつつ、スローテンポに持ち込む狙いが見て取れそう。このあたりは、スタメンが出てから川崎側の出方が窺えるだろう。

ピンチの時、目をやるべき場所は?

ボール保持に自信を持ち、力関係が拮抗する両チームが、相手を押し込む時間帯はどちらも等しく訪れるはず。その中でキーとなるのが、陣地回復手段である。

相手に押し込まれ、即時奪回を繰り返される時間帯で、前線の選手がいかに時間を作るか。マリノスの場合はアンデルソンロペス、ダミアン不在の川崎は代わって出場が予想される宮代がいかにこの役目を担えるか。我慢の時間帯にこそ、最前線でボールを待ち構えるストライカーとそれを潰そうとする守備陣のタイマン勝負に目を移してみても面白いかもしれない。

全体を総括すると、注目ポイントは以下になる。

・橘田をアンカー/IHのどちらで使うか
マリノスのプレッシングに対し、家長がどこに顔を出すか
・押し込まれた局面で、両センターフォワードがボールをいかにしてキープするか

 

予想スタメン

予想スタメン