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2023J1第2節 横浜F・マリノスvs浦和レッズ プレビュー

浦和レッズについて

今季の目標・位置づけ

ど派手にぶち上げた3か年計画はリーグタイトルからかけ離れたところで終焉。当然クラブ内外からは懐疑的な声もあがる。それでも各ステークホルダー、特にサポーターの理解を得ながら着実に歩を進めようとしているのがいまの浦和レッズである。

守備的なマインドが色濃かったリカルドの後任には、21/22ポーランドリーグの優勝監督であるマチェイ・スコルジャ氏を招聘した。クラブ理念に基づき、より攻撃的に、縦へのベクトルを強調したチームに生まれ変わろうとしている。

今季の目標だが、まず5月のACL FINALに勝つことは至上命題であり、リーグ戦でいえばACL圏内はマスト。あわよくばリーグ優勝を狙いたいところだろう。

 

どんなチーム?

浦和の開幕戦は、アウェイでFC東京との一戦。私も実際に足を運んで見に行ってきた。

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立ち上がりの印象は、「めちゃくちゃ速い…」だった。奪ったらとにかく前へ、縦へ。前体制からの変化を強調するために、かなり強く意識づけを行なってきたようだ。その中で、プレッシングは相当仕込んでシーズンに臨んでいる。基本的な構造は、4-4-2ベースの中切り外誘導であり、2トップが相手センターバックに強くアプローチする。形でいえばオーソドックスなものである。

綿密に仕込んだ非保持に対して、逆に保持は、現状昨季の文脈を踏まえた色、とりわけ選手の特徴を活かす前進の意図が感じられる。基本線としては、岩尾憲の立ち位置とボール循環の妙と降りて受ける小泉の組み立てから、サイドに展開し、スピードアップする。特に、昨夏のACL決勝ラウンドで猛威を振るった、酒井とモーベルグのユニットは、見事な補完関係を築いており、大きな武器である。

前半は東京のアダイウトンの背後のスペースから芋づる式に東京のアンカー脇を使って押し込むこともできたが、後半に東京がダブルボランチに変えると、スペースを消されて上手く攻撃ができず、逆に速攻を浴びて0-2で敗北を喫した。

課題は、どうやって点を取るかという部分。右サイドからモーベルグがクロスをあげたところで、ボックス内にはリンセンと大久保しか入っていなかったりする。2人ともハイクロスに競り勝てるような選手ではなく、特徴を活かした得点パターンというには難しい。ロジカルな前進と非ロジカルな崩し。どう点を取るかという部分の落とし込みには至っていないのだろう。いくらキャンプを経たからといってすべて網羅的に練習できるわけではないのは、サッカーの難しさである。

 

試合展開の予想

浦和の外誘導に乗っかる?

大前提として、浦和は縦横圧縮のブロックはやってこないだろう。なぜなら、そうやって勝ったところで、スコルジャ監督招聘の意味がないからだ。開幕戦に敗れたとはいえ、リーグも序盤戦で、かつ、敵陣で長い時間を過ごしたいというチームのやりたいことが見えながらも仕込みきれていない状況。このまま突き進む以外の選択肢はない。

これを踏まえてまずポイントになるのは、浦和の外誘導にマリノスが乗っかるか否かである。先のスーパーカップでは、GKオビのビルドアップ参加、渡辺のアンカー落ち、上島の右ストッパー化など立ち位置の妙で3バックを形成し、中央を起点に甲府のプレスを剥がしきって先制点を奪うなどのシーンが見られた。例えばオビからスタートしたとき、浦和2トップの間に顔を出す喜田or渡辺に対して浦和がどのような反応を示すかボランチが前に出るのか、2トップが縦関係になるのか。

仮に浦和が明確にマリノスボランチを消しに来た場合は、外誘導に乗っかることになる。主になるのは、マリノスの右サイドからの前進。松原が浦和のサイドハーフを引き出す位置で受け、その背後にボランチorトップ下・西村が流れる。これに対し、浦和がどう反応するかがこの試合のポイントになる。例えばサイドに流れる西村にCBがついてくるのか、マリノスお得意の密集ポゼッションで打開することができるのか、左サイドのエウベル⇔永戸セットに展開できるのか。

いずれにしても、マリノスが浦和に対して武器をちらつかせながら反応を窺う構図になるだろう。

 

現実主義な4バック

浦和の保持の基本形は、先述した通り。これに対し、マリノスはどのように奪いに行くか。
今季のマリノスは、昨季の左誘導プレスとは少し異なる構造・考え方のもとで戦っている。プレスの構造上、中切り外誘導なのだが、4バック(特にサイドバック)が縦スライドしない、つまり、むやみに人を捕まえに行かない。例えば昨季であれば、外切りするウイングの背後の相手選手にボールが渡ったときは、必ずサイドバックが前に出ていた。その結果、サイドバックの背後を使われたところを岩田智輝が慌ててカバーする場面が数多く起きていた。それと比べれば、今季のマリノスはより現実的になったということもできる。多少相手チームの保持の時間が長くなったとしても、無用なリスクは冒さない。たとえプレスを剥がされても、致命傷は負わない。

これを踏まえ、浦和がどのように攻撃するかは、この試合の大きなポイントになる。できることなら、岩尾と小泉のところで保持を作ってサイドに展開する王道のパターンで試合をコントロールしたいはずだが、中盤でマンツーマンを作るマリノスはやらせないだろう。しかし浦和は、キックの名手・西川周作から酒井宏樹へのロングボールという飛び道具がある。プレス回避のために、サイドの高い位置を取る酒井にロングボールを蹴って競らせるという形は容易に想像がつくし、実際に東京戦でも実践していた。そうなると、必然的に攻撃のスピードが速くなる。ここで考えられるのは、ゴール前のチャンスメイクに優れたモーベルグよりも、スペースがある状態でボールを運べる大久保を右ウイングで起用するのではないかということ。

しかし、縦へのベクトルが強すぎた開幕戦と、かつ、敵陣で長い時間を過ごすための意識づけがしたい時期であることを鑑みると、やはり右サイドで時間を作り、押し込むことにこだわるのではないか。モーベルグのコンディションが明らかに万全でないにもかかわらず、開幕戦でスタメン起用をしたことから鑑みると、スコルジャ監督の中でモーベルグと酒井の補完関係は、かなり評価が高そうであり、そうそう外せないのかもしれない。

川崎戦ではマルシーニョとの壮絶なマッチアップが右サイドで繰り広げられた直後で、今度は左サイドでモーベルグ&酒井とのマッチアップになる。タイミングを外してくるようなウインガーの対応に長けた永戸の守備的貢献がマストな試合になりそうだ。

 

予想スタメン

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