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2023J1第3節 横浜F・マリノスvsサンフレッチェ広島 プレビュー

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サンフレッチェ広島について

今季の目標・位置づけ

サンフレッチェ広島にとっての2022年は、飛躍のシーズンとなった。指揮官1年目でありながらリーグでは3位、天皇杯は準優勝、ルヴァンカップは優勝。これ以上ないと言っても過言ではない。

そもそも現在の広島は、育成年代の収穫期にあたる。2016~18年の高円宮杯プレミアリーグWEST(高校年代の1部リーグ)で1位→2位→1位の好成績を収めたチームの中心メンバーだったのが、満田誠、川村拓夢、大迫敬介、東峻希らである。彼らが22~24歳にしてチームの屋台骨を担っている。

クラブとして育成の芽が実る収穫期に、ドイツで育成年代指導経験が豊富なスキッベの存在。まさに素晴らしい素材が集まった冷蔵庫に最高の料理人といったところ。昨季の躍進は、実は驚くことではないのかもしれない。

今季の広島が目指すものとしては、昨季攻守両面でリーグを席巻したサッカーのアップデートは当然のこと、ACL出場、その先のリーグ制覇を狙う。今冬は控えめな動きではあったが、昨季も持てる素材を活かしながら時期によって形を変えてシーズンを戦い、好成績を残した。メルカートでの動きをもってこのチームの下馬評を低く見積もるのは、得策ではないだろう。

 

どんなチーム?

安定したポゼッションと強度の高いプレッシングを武器にして、攻守両面で試合をコントロールするチームだ。

今シーズンの2試合を見ていると、チャンスメイクはクロスからのものが非常に多い。というか、ほとんどこれだけ。しかし、構造を見ていくと非常にロジカルである。

ウイングバックが低めの位置を取って相手のサイドバックを吊りだす
②CFのベンカリファがサイド奥深く(サイドバックの裏)のスペースに出ていく
③相手のセンターバックを吊りだす
④空中戦に強い相手のセンターバックをクロス対応に参加させない

ゴールから逆算し、自らにとって有利な状況を作り出そうとする狙いは見て取れる。パターンの数は多くないが、ある程度固定したメンバーで相手に応じた駆け引きを行う中で、練度は高まっている。

しかし、マリサポ的には広島の非保持・オールコートマンツーマンプレスが気になるだろう。FP10人に対し、担当を決めて全員がマンツーマンで付く。しかし、前節対戦した新潟は非常に興味深いものを見せてくれた。そもそも初期配置のズレを活かしながら、引き込んで裏を取ることを繰り返し行い、見事に広島のプレッシングを攻略してみせた。特に、新潟のボランチを捕まえるために松本泰志が前に出てくるのに呼応して野津田の脇でトップ下の伊藤涼太郎がフリーで受けるシーンが数多くみられた。

これに対し、広島はハーフタイムに修正を施す。新潟の4-2-3-1に対し、3-5-2の形、つまり2トップ+2枚のインサイドハーフ+1枚のアンカーという配置の変更を行い、野津田がはっきりと伊藤を見る形にしたことで、プレッシングがハマり、後半は攻勢に出られるようになった。

 

試合展開の予想

春のオールコートマンツー祭り Part1

マリノスとしては、まず昨季ホームもアウェイもルヴァンカップも、散々煮え湯を飲まされた広島のプレッシングに対してどう振る舞うべきか。

そもそも立ち上がりのマリノスは、新潟同様、センターバックのところから芋づる式に剥がし、野津田の脇で西村がボールを受ける形を狙うことが予想される。

これに対して広島は、新潟戦後半のように、配置が噛み合うように非保持では3-5-2の形にしてくると考えられる。配置で言えば、満田とベンカリファの2トップ、川村と松本のインサイドハーフ、野津田のアンカーといったところか。それぞれ、2トップはマリノスセンターバックを、インサイドハーフマリノスボランチを、野津田はトップ下・西村を見る。こうなると、新潟と同じようにはいかなさそう。さすがにここはしっかりと修正してくるに違いない。

そのうえで考えられる前進経路は、マリノスの右サイドバック周辺とオビのロングキックだ。

今季のマリノスは、右サイドバックが低い位置を取り、ほぼセンターバックの隣にいることが多い。すると、対面のウイングバックの移動距離が長くなる。ここは、運動量とスピードに秀でる満田が1人で2人を見る形になることが予想される。外回りの前進ということになれば、マリノスの右サイドバック周辺にまつわる攻防でどちらが優位に立つかが注目ポイントだ。

サイドバック周辺でうまく起点を作れない場合は、オビからロペスへ目掛けたロングキックが有効になる。ただし、対面の荒木は空中戦に滅法強いため、さしものロペスでも空中戦勝負になると分が悪いだろう。あくまでも山なりのボールではなく、より直線的で低弾道のキックで、ロペスの胸または足元に付けるくらいのキックが望ましい。オビがロングキックを蹴る際は、どのようなボールの弾道になっているか、あとこの季節は強い風が吹くことも考慮し、このあたりは注目しておくと良いだろう。

いずれにしても、広島のプレッシングとの向き合い方は、常に試される。試合序盤に新潟のビルドアップをイメージをした入りをして、かつ広島がそこを明確に修正する配置を取ってきた場合に、後手を踏み、苦しい我慢の時間帯になる可能性は大いにある。また、試合を通じて狙い通りに前進できるわけでもないだろう。そうであったとしても、まず敵陣に到達できなければ話にならないのも事実である。

 

動くべきか、動かざるべきか

もしも前述したオールコートマンツープレスに対して後手を踏む場合は、必然的に広島がボールを握り、マリノス陣内でプレーする時間が長くなるだろう。マリノスとしては、低い位置のウイングバックをどうするか、その後のサイドバック裏をどうするかという判断を迫られる。

たしかに今季の現実主義アプローチでいえば、相手の陽動には乗らず、多少ボールを保持されてもコンパクトな陣形を維持するかもしれない。しかし、試合後監督コメントを読む限り、ケヴィン的にはゾーン3に押し込まれ続けるのは好んでいなさそう。むしろ、ボールを奪いに行く、前へのベクトルは常に持ち続けたい志向は見える。ボールを握る広島と対峙するチームの意識づけも兼ねて、立ち上がりはウイングバックにはサイドバックが、裏のスペースはセンターバックがカバーというように、吊り出しに乗っかるのではないかと予想する。ホームだし、三ツ沢だし。そこであまりにも後手を踏む場合、あるいはリードする展開になった場合は、吊り出しに乗っからず、コンパクトな陣形を維持するかもしれない。

互いに点を取るための型を持つチームであり、成熟もしているからこそ、序盤から試合が動く可能性は大いにある。刻々と変わる状況・展開に対して両指揮官がどうマネジメントするか、注目したい。

 

まだ見ぬ2023マリノスの全容

幸運にも、今季最初の3試合はリードしている時間が長い。よって、現実主義的アプローチが色濃く見えているのは、そのせいかもしれない。

リードを奪うと、必要以上に試合を動かそうとしないどころか、むしろ殺しにかかる。非保持では、無闇に奪いに行くことはせず、相手に持たせる。一方保持では、攻め急がず、ポゼッションの時間を作る。早い時間に先制してもロースコアで推移するのらりくらり感。しかし、ひとたび相手が焦れて間延びすれば、ウイングのキャラ変を敢行し、ギャップを使って致命傷を負わせにかかる。ある意味マリノスらしくない勝ちパターンができつつある。

しかしこの試合は、同じようにいかないかもしれない。立ち上がりに我慢の時間帯が見込まれるなど、必ずしもリードしたまま試合ができるとは限らない。例えば追う展開になったとき、あるいは0-0の時間が長引いたときにどうするのか、まだ見ぬ姿が見れるかもしれない。そういう楽しみもどこかに持ちつつ、じっくり見ていこう。

 

予想スタメン

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