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2023J1第4節 北海道コンサドーレ札幌vs横浜F・マリノス プレビュー

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北海道コンサドーレ札幌について

位置づけ・目標

ミハイロ・ペトロヴィッチ6年目のシーズンである。紛れもなく長期政権であり、攻撃的サッカーを標榜しつつ毎年試行錯誤を繰り返しながら今に至る。

上位下位関係なく自分たちのスタイルを前面に押し出して戦う背景もあり、どのチームとやっても自陣⇔敵陣のゴール前を行き来するスリリングな展開になりやすい。ベースにあるのはスピーディーな攻撃であり、この哲学はミシャ就任以後変わっていない。

数年にわたるミシャの試行錯誤は、引いた相手からどう点を取るかという課題に重きが置かれている。今季取り組んでいるサッカーの詳細は後述するとして、ここで言及したいのは目標である。まずはここ数年中位が定位置となりつつある状況を踏まえ、一桁順位はマスト、あわよくば5位以内やACL出場権を勝ち取りたいところだろう。攻守両面でチームの柱だった高嶺が柏レイソルに移籍したことは痛手ではあるが、ミシャはその点も踏まえて今あるスカッドで再び開花させようとしている。

 

どんなサッカーをしている?

現在の札幌を知る上では、前節・新潟戦のハイライト、いや、ゴールシーンだけでもいいから見てほしい。両チームの1点目は、まさに現状の札幌を表している。


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マリサポ的には、札幌のプレッシングが強烈に印象に残っているだろう。マンツーベースで後方が相手と同数になることを許容したほぼオールコートマンツーの形。今さら言及するまでもない。

逆に保持局面では、先述した引いた相手を崩すための狙いが見える。そもそもベースの考え方は、相手DFラインの裏を取ること。ボールの位置に関わらず、まず第一の選択肢は"裏"である。ここから大きく分けて、ボールを積極的に奪いにくる相手と引いてスペースを消しにくる相手とに大別して整理する。

まずボールを奪いにくる相手に対しては、ボランチが最終ラインに降りるなどして数的優位を作り、相手が食いついてきたところで、盤面をひっくり返すロングボールによって裏を取る。これは元来札幌がやってきたこと。

一方、ボールを持たされたときの振る舞いについて今季取り組んでいることがある。まずビルドアップの出発点だが、昨季は岡村が右、高嶺が左だったのに対し、今季は宮澤が右、岡村が左に立ち位置をずらしている。これは、よりパスセンスに優れた宮澤を札幌のキーである右サイドに置くことで、ビルドアップを円滑にしようという狙いが見て取れる。その状況から右前進フェーズへ移行する。

右サイドには田中駿汰、金子拓郎、小柏剛のトライアングルがいる。このチームで長く一緒にプレーしてきた3人は、今の札幌の武器だ。仮に4-4-2で守る相手を想定すると、田中が相手のサイドハーフを、金子が相手のサイドバックを引きつけることで、小柏がサイドバックセンターバックの間(=チャンネル)に飛び出す。対戦相手の視点に立てば、田中のボールを運ぶスキルとパスセンス、金子のドリブルは無視できないため、この2人にはついていくしかない。新潟戦の1点目は、まさにこの形から生まれた。大外に引きつけて小柏が内側のレーンを爆走し、新潟のボランチ・島田とのかけっこに勝利。そのままクロスからオウンゴールを誘発した。

現状、小柏がいるといないとでは、チーム全体のパフォーマンスにかなり開きがある。この点、今季の補強で獲った浅野雄也との比較がわかりやすい。浅野も開幕から2試合右シャドーで先発出場をしていた。小柏同様、スピードが武器の選手だが、両名の違いは「立ち位置」にある。浅野は、立ち位置が終始高すぎることから、相手のセンターバックに捕まってしまうシーンが目立つ。一方の小柏は、最初はあえて相手のボランチの周りを浮遊しながら一気に加速し、相手に捕まらずに裏のスペースに抜けることができている。このチームにおける経験の差が現れていることは明白であり、これは時間が解決してくれるはず。しかし今回のマリノスとの試合を見据えたときには、少し気になるポイントとして挙げておきたい。なんせその小柏も怪我明けで万全のコンディションではないのだから。

 

試合展開の予想

誰に持たせ、誰を塞ぐか

相手にボールを持たせる時間も作るマリノスに対して、札幌が何を準備してくるか。広島のようにボールを捨ててくるのか、保持を作るのか。

これが一つ目の焦点になる。ここでは、仮に札幌がボール保持にこだわってやってきた場合を考えてみる。つまり、自分たちのスタイルを貫き、真っ向勝負を挑んでくる場合だ。

まずトップ下の西村がアンカーポジションを取る荒野に付くのは自明として、札幌の機能性高き右ユニットをどう考え、どう封じるか。採り得る策は2つ。

  1. 右前進の形を作られることを許容し、小柏の飛び出しに備える
  2. 右前進そのものを切って左に誘導する

1.を採用する場合は、小柏の飛び出しに対するカバーリングが必要になるが、この試合は出場停止の永戸に代わって角田が左サイドバックを務める可能性が高い。そのため、角田のカバーリングをこの局面で活かすことができないという懸念がある。ここは、代わりに出場するであろうエドゥアルドの予測・判断の能力に懸けたい。

逆に2.を採用する場合は、キックの名手・福森へのプレッシングがマストになる。前に蹴られることは許容したとしても、振らせたくはない。右ウイングの井上健太の素早いアプローチが必要になるだろう。しかも角田が左サイドバックに入る場合は、福森からの対角線フィードに対して対処できそうである。

1.と2.のどちらをケヴィンが採用するかは、ロペス&西村のコース限定と、エウベル&井上のアプローチのスピードやどのコースへのパスを遮断しようとしているかによって、狙いを掴むことができそうである。どの選手に持たせることを許容し、どの選手には前を向いて持たせたくないのか。

特に、田中駿汰vsエウベル、宮澤vsロペスのマッチアップには注目したい。

 

ボールを捨ててくるのなら・・・

一転して、もしも札幌が保持を捨ててボールを持たせてくる場合(キムゴンヒめがけたロングボールが多くなる場合)は、いつも通りの札幌戦の様相を呈することになる。

ここ最近のマリノスの試合を見ていれば、ダブルボランチの喜田と渡辺を捕まえられないことで、いかに対戦相手にとって難しい構図になるかを思い知っているだろう。よって、札幌の出発点は、マリノスボランチをゲームに参加させない方策になる。そのために彼らが採り得る手段は「行ききる」ことである。前節・新潟戦の札幌は、2トップの形にして2枚のセンターバックが付き、ダブルボランチにもマンツーで対応していた。これは、マリノス戦の後半に広島がやってきたことに近い。

注目は、マリノスのビルドアップがスタートする時、左ウイングバックの菅がどこにいるかである。菅は、スピードに難がある福森をサポートするために初期配置では後方に位置する傾向が強い。すると、対面の右サイドバック、つまり松原が瞬間的にひと呼吸おく隙が生じる。マリノスとしては、この時間を上手く活用して前進したい。フリーになるために動く喜田と渡辺、降りて受けるロペスと反転して背後に飛び出す西村。いくつかある選択肢から最適なものを選んでいく作業になる。

背後が同数になるリスクを冒してプレスをかけてくる札幌に対し、百発百中で綺麗に前進できることなどあり得ない。大ピンチと大チャンスが交互に訪れるようなスリリングなゲームになる。

得てして札幌戦とはそういうものだ。

 

予想スタメン

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