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横浜F・マリノスを中心に、サッカーの奥深さ、戦術の面白さを伝えたい

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2023J1第5節 横浜F・マリノスvs鹿島アントラーズ プレビュー

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鹿島アントラーズについて

位置づけ・目標

鹿島にとってこの3年間は、トレンドとの闘争だった。昨今世界のサッカーシーンを席巻する、相手の中間ポジションを取り続けるポゼッション、攻守切り替え・トランジション局面を肥大化するスタイルなど、攻撃面で主導権を握れるチームに生まれ変わろうともがいてきた。しかし、強化部をはじめとするフロント、監督、選手がなかなか一枚岩になれていない状況が続き、度重なる監督交代を経て、2022シーズン夏に就任したクラブOBの岩政監督のもとで新たなシーズンを迎えている。

最新のサッカートレンドに精通し、それを"鹿島の言葉"で説くことができる岩政監督は、伝統の守備をベースにしつつ、攻撃的なアプローチを上手くブレンドしながらチームを再建している途上。迎えた今季、昌子源植田直通らかつてクラブを支えた守備の要のダブル補強に成功し、一部では優勝候補に推す声も上がるほどの前評判である。

「鹿島は勝たねばならない」

新しい取り組みをするからといって目先の結果から目を背けてはいけない。この現実を踏まえて岩政監督は、やりたいサッカーは標榜しつつも、節々に目先の試合を制すための現実的なアプローチも見受けられる。今季はここまで2勝1分け1敗の好発進を切っており、5節にして昨季王者とのビッグマッチに臨む。

どんなサッカーをしている?

保持/非保持を問わず、敵陣でゲームを展開したいチームである。ちなみに、レネ・ヴァイラー前監督時代から続く志向でもある。

以下、そのための方法論を述べる。

システムは4-3-3が基本だが、試合や展開に応じて4-4-2もオプションに持つ。特徴的なところで言えば、初期配置で新加入の知念を左のウイング、鈴木優磨をストライカーポジションに置く。ゴール前で存在感を発揮する知念と縦横無尽に動き回ってゲームを組み立てることに長けた鈴木。この2人の特徴を考えれば、オリジナルポジションにとどまらないのは自明。このチームは、前線の選手が動くことが前提に置かれている。選手が入れ替わり立ち替わり動いて顔を出す中で、瞬間的にフリーな味方を作る。そこから前を向いて一気にゴールへ迫る。バックラインは、とにかくボールを前線へ送り込む。非常にシンプル。ハイカロリーでハイテンポ、これが今の鹿島の色である。

前節・福岡戦は、対戦相手が人数をかけてブロックを形成したこともあったのだろうが、ややテンポを落としてポゼッションする様子も見受けられた。その状況で選手が動いた結果、最終局面でボックス内に人数をかけられていない場面も散見され、まだまだ試行錯誤の最中であることが見て取れる。

福岡戦でテンポを落とすアプローチを選択した理由は、ハイテンポが続かないこと。立ち上がり20分間というのは、鹿島の試合を読み解く上で大きなポイントになる。とにかく前線に速くボールを送り込み、奪われたら即時奪回。この恐怖のループがハマった京都戦・川崎戦・横浜FC戦は、開始早々に先制点を奪って優位に試合を進めることができた。しかし、どの試合でもそれ以降の時間帯で劣勢を強いられている。一方で、リードした後はミドルゾーンにコンパクトなブロックを形成し、相手にボールを持たせることでペース配分をしていることも原因の一端にはある。しかし、どの時間帯であってもあくまで自陣に押し込まれることは許容せず、高い位置で奪う姿勢は維持している。

 

試合展開の予想

立ち上がり20分間の攻防に注目!

この試合でまずポイントになるのは、立ち上がり20分間の攻防になる。立ち上がりの鹿島は、躊躇なくサイドの奥をめがけてひたすらボールを送り込んでくる。どんなプレッシングでもこれを封じる術はなく、蹴られるものはしょうがない。

問題は、そこから先のセカンドボール回収合戦でどちらが優位に立ち、速攻に繋げるか。これまで鹿島が対戦してきた相手は、一様に後手を踏んで先制点を許していたが、マリノスには通じないと言わんばかりに力を誇示したいところ。鹿島が前がかりで来るならば、ひとつひっくり返せばチャンスになる。ハマれば大量得点の可能性だってある。

いずれにしても、試合が大きく動く時間帯がいきなりやってくる。前半20分を経過した時点でどちらが優位に立っているか、注目だ。

佐野海舟不在をどう捉える?

立ち上がり20分間のラッシュが終われば、鹿島はミドルプレスに移行する。ただし、この日は佐野海舟が出場停止。4-3-3にしろ4-4-2にしろ、佐野がこなした役割は鹿島にとってなくてはならないものだった。ミドルゾーンの横幅、サイドバックセンターバックの間など気の利いたスペース管理は、誰にでも真似できる芸当ではない。

これらを踏まえ、鹿島はボランチの強度不足が比較的剥き出しにならない4-4-2でスタートするだろう。これまでの出場時間等の序列を鑑みると、ピトゥカと樋口のダブルボランチ、右に藤井、左に土居か仲間が入ると予想する。

マリノスは、浦和戦のイメージで右前進が基本形になる。低い位置を取る松原が相手サイドハーフを吊り出してその裏に西村が顔を出して受ける。そこからロペスを経由して左サイドのエウベル⇔永戸ラインへ展開する形。もはやお馴染みとなったパターンだ。

この構図になったとき、鹿島の左ボランチに誰が入り、どのような役割を果たすかが焦点になる。マリノスの前進構造を考えたときに、まず松原→ロペスのパスコースを消しながらサイドに流れる選手を捕まえなければならず、これは構造の理解と的確な状況判断が求められるからだ。人を捕まえること、スペースを管理することにかけては、ピトゥカよりは樋口が長けている。普通に考えれば左ボランチには樋口が入るのだろうが、このあたりは攻撃の局面でどんな役割をボランチに持たせるかによっても変わるため、岩政監督がどのような判断を下すかによる。試合が始まったら、鹿島の守備ブロックの構造(4-3-3?4-4-2?)と中盤の左側に誰がいるかに注目したい。そこから岩政監督の狙いを読み解いてみると面白そうだ。

 

予想スタメン

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