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2023J1第6節 セレッソ大阪vs横浜F・マリノス プレビュー

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セレッソ大阪について

位置づけ・目標

リーグ戦は5位でフィニッシュし、ルヴァンカップは準優勝の好成績。セレッソ大阪にとっての2022シーズンは充実していた。持ち前の中央3レーンを徹底的に封鎖する守備を軸に、特に横浜・川崎の2強から勝ち点を奪った数少ないチームである。(横浜には2戦2分け、川崎にはシーズンダブル達成)

迎える今季は、ACL出場権獲得が目標になるだろう。小菊監督のもと継続しつつ、やれることを増やしていくシーズンになる。レオセアラ、クルークスらJでの実績豊富な実力者、さらにはレジェンド香川真司も復帰したチームは、ともすればリーグタイトルにも手が届きそうな充実のスカッドに。しかし、序盤5試合を見てみると、やや躓き気味でのスタートとなった。

 

どんなサッカーをしている?

今季のセレッソは、ハイプレスと得点パターンの構築にトライしている。

開幕後数試合は、右サイドハーフにクルークス、右サイドバックに毎熊が入り、2トップの一角にはレオセアラを置いて戦っていた。保持面では、右大外でクルークスが相手を吊りだしたところから毎熊がニアゾーンに突進する形や、レオセアラが降りて受けつつ前進を図るなど、昨季から進化したロジカルなパターンも見られた。

しかしその反面、課題も見られた。4-4-2ベースで中切り外誘導、そこからボランチも積極的に前へのベクトルを持ちつつ人を捕まえていく。しかし開幕後数試合に右サイドハーフでスタメン出場していたクルークスのところで1枚剥がされる、あるいは、レオセアラの脇を相手センターバックに持ち運ばれるなどのエラーが発生した。

この状況に対し、右サイドハーフに毎熊、右サイドバックに松田、2トップに香川と加藤を置いた、昨季のメンバーを中心とした構成に戻すことで、まずはプレッシングの強度を高め、守備の安定を図っている。この点、守備組織の基盤を維持したい小菊監督の思考、ひいてはこのクラブの色が見え隠れする。

逆にボール保持では、プレッシングの強度を優先した反面、先述した機能性の高い右サイドのクルークスと毎熊のスペースアタックは失われ、チャンスメイクは左サイド、もっと言うと、左サイドバック・山中のアーリークロスに限定されている。ただし、武器は決して多くないものの、威力を最大化する策は体現されている。

・山中のクロスに飛び込むストライカーの加藤や右サイドハーフの毎熊は、上背があって空中戦に強い
・左サイドハーフの為田は、持ち前のキープ力を活かしてやや中央寄りの立ち位置を取り、山中がオーバーラップする時間を作る
・トップ下の香川は、ボランチの位置に降りて鈴木徳真と共にボールを循環させる

開幕当初、鈴木徳真を封鎖されたときにどうボールを動かすかに迷っていたが、香川がトップ下に定着したことで一応の解決を見た形である。

 

試合展開の予想

9ヶ月前の忘れ物

代表ウィークの中断も挟み、両チームが何を準備してくるか、少々読みづらい部分もあるが、小菊監督の思考性から逆算すれば、ここはプレッシングの機能性重視のメンバー構成をしてくるだろう。直近で成果が出ている加藤と香川の2トップ、毎熊と松田の右サイドに、為田と山中の左サイド。ここは変わらない。その上でマリノスの左右の前進に対して、どう蓋をしてくるか。昨季7月のゲームでは、永戸を押し下げさせることによってエウベルが孤立する状況を作り、対人に自信を持つ松田が単騎でエウベルとのタイマン勝負に勝つという構造でマリノスを大いに苦しめた。

しかし、あのときと状況は違う。右サイドで畠中を起点とした水沼、小池、西村、ロペスらが密集を作りながら左サイドに展開する形など、マリノスは前進の引き出しを増やした。要するに、あの時よりも成長した。9ヶ月前、「左サイドを封じれば何もできないだろ」を突きつけられた相手に対して、今回は再び自分たちの力を試す場になる。

ひとつセレッソの直近の試合を見ていて気になったのは、右サイドバックの松田めがけてロングボールを蹴られた際の対応にある。松田が跳ね返したボールを相手に拾われて速攻を受けるシーンがかなり目立つ。これは、サイドハーフボランチが前に出る反面、背後のスペースを使われやすいという意味で、ハイプレスの副作用とも言える。いずれにしても、マリノスがこの試合で狙いたいポイントである。今季、角田から一気に裏を狙うボールでエウベルを走らせるシーンが見られるため、イメージは比較的容易にできる。

 

保持に見切りをつける時

セレッソのビルドアップは、大きく分けて2点によって支えられている。

①キムジンヒョンから為田へのロングボール
②鈴木徳真&香川真司を経由した左サイド旋回

ほぼこの2点によって成り立っている。そして先述した通り、出口は山中のアーリークロスだ。

マリノスとしては、まず鈴木徳真にトップ下の西村がマンツーで付くところが出発点になり、降りて受ける香川には喜田or渡辺のボランチが付く。まずは地上戦のビルドアップを封鎖し、キムジンヒョンにロングボールを蹴らせることで選択肢を絞りたい。ロングボールを蹴らせれば、あとはターゲットになる為田のところをどうケアするか。この点、上島の右サイドバック起用は有効打になり得るが、あくまでも保持で右サイドの前進がスムーズに行われることが前提。台所事情厳しい右サイドバックに誰が入るかは、この試合を大きく左右する因子になるだろう。

セレッソとしては、前進がうまくいかず、マリノスのポゼッション時間が長くなったとしても、サイドで奪う、もしくセンターバックボランチのパス交換を引っ掛けたところから決定的なショートカウンターを1本決めてしまえば、ゲームを優位に進められるとの算段を立てているはずだ。あとは、小菊監督がボール保持にどこで見切りをつけるか。香川に替えて上門を投入するタイミングが、まさにそれを象徴する瞬間。そのとき、スコア展開がどちらに転んでいるか、両指揮官の交代策にも注目である。

 

予想スタメン

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