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横浜F・マリノスを中心に、サッカーの奥深さ、戦術の面白さを伝えたい

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2023J1第11節 サガン鳥栖vs横浜F・マリノス プレビュー

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About Them

位置づけ・目標

毎年起こる主力の流出に耐えながらJ1で根強く戦っている鳥栖だが、今オフに宮代と垣田という2人のストライカーを引き抜かれたのはさすがに痛かったようだ。代わりに獲得した富樫も開幕後早々に負傷し、昨季のような序盤の勢いは見られない。

しかし川井監督2年目を迎えるチームは、今季獲得したセンターバックの山崎、左サイドバックの坂本、ボランチの河原らがすでにチームの主軸として活躍しており、ここ数年積み上げてきたポゼッションとインテンシティを組み合わせたサッカーに継続して取り組む。

今季の目標は、トップハーフはノルマであり、可能であれば5位以内を目指したい。しかし、これは鳥栖の試合を見ていると思うことだが、最終的にどんな順位になるかはあまり気にするところではなく、いかに良いゲームをするかにフォーカスされている印象を受ける。勝つか負けるかでなく、どう勝つか。それこそが鳥栖の矜持である。

マリノス鳥栖は3月末にルヴァンカップグループステージで対戦したばかり。お互い代表選出以外のほぼフルメンバーで戦ったゲームは、マリノスが2-0で勝利を収めている。

 

どんなサッカーをしている?

鳥栖の代名詞は、自陣深くに相手を引き込んだところから盤面をひっくり返して速攻を仕掛けるサッカー。今季も例に漏れず取り組んでいるものの、なかなか思い通りに前進できない場面も散見される。というのも、今季のJ1はハイプレスを志向するチームが多く、鳥栖のビルドアップに対して奪いに行く守備を展開するのだが、昨季まで在籍した宮代や垣田のような、盤面をひっくり返すロングボールを収めてくれるストライカーが不在であり、ボールを逃がすことができない。見方によっては相手が誘い込みに乗っかってくれているため、鳥栖が望む状況を作れているのだが、如何せん直近の試合で最前線に入っている小野裕二では相手センターバックを背負ってキープすることは難しい。

とはいえ、工夫は凝らしている。まず両ウイング(長沼&岩崎)が高い位置で幅を取ることで、深さを作る。その上で、小野とトップ下の本田(堀米)がサイドに流れながら降りて受けることで、屈強な相手センターバックと正面で張り合わなくても良い状況を作る中で前進を試みる。

直近の京都戦では、外切り4-3-3プレスに対してサイドバックがフリーになる状況を作り出したところから、両サイドの長沼&岩崎が対面のサイドバックとの1on1に勝てたため、前進することができていた。しかしその一方で、小野&本田を使って中央から前進することはなかなかできなかった。現状、小野&本田の降りる動きによって時間を作れる、もしくは両ウイングが対面のサイドバックに勝てるというどちらかの条件が揃えば、鳥栖が得意とする構図には持ち込めるようだ。しかし、そのどちらも潰されてしまう相手というのが、J1には数多く存在する。そうなったときの回避策は、現状持てていない。

 

Point of This Game

サイドの主導権めぐるタイマン勝負

鳥栖のビルドアップに対しては、いつも通り4-2-4の形でプレッシングを行うことになる。今季の鳥栖は上下のポジションチェンジをあまり行わないため、人を捕まえるマリノスのプレス構造ならば、目の前の相手を捕まえればよい。その中で、本田と小野が降りていく動きに対して畠中&角田のセンターバックコンビが後手を踏むとは考えにくい一方、鳥栖の両ウイング(長沼&岩崎)との1on1に松原&永戸が勝てるかどうかでこのゲームの大枠の優劣が決まるといってもよい。ここは踏ん張りどころである。

特に、鳥栖の左サイドで優位を作られれば、岩崎の単騎突破だけでなく、左サイドバックの坂本やトップ下の本田らが絡み、サイドで三角形を作りながら内側のスペースに侵入されてしまう。前回対戦時の前半はこのスペースアタックに手を焼いた側面もあるだけに、今回のゲームはプレッシングの成否が大きな鍵を握りそうだ。

 

名古屋戦から何を学んだか

逆にマリノスのボール保持に対して、鳥栖は人に付く同数プレスをかけてくるだろう。前回対戦時にマリノスが手を焼いたものであり、他のポゼッション型のチームが相手なら鳥栖が必ずといっていいほど遂行している策である。また、前節の名古屋が同様のプレッシングでマリノスを大いに苦しめたこともあり、同じ手を使ってくることはほぼ間違いない。

マリノスとしては、名古屋戦前半の反省を活かしたいところ。というのも、奪われた後のカウンターを恐れるあまり前方向へのチャレンジが鳴りを潜めた。各選手が口を揃えて挙げた上記の課題に対する進捗が見られるかもしれない。

名古屋戦は、ロペスを使わない左サイドからの前進にトライするなど、チームの成長を見据えたテーマ・意識づけの意味合いを強く感じる試合だった。そして今回の鳥栖戦も同様のアプローチの延長線上にある。鳥栖を引き込むことで前後分断を引き起こし、手薄になったところを一気に攻めるやり方を突き詰めることにになる。

現段階で、相手を毎回綺麗に剥がしてシュートまで行けるわけではなく、この先も練度の向上に取り組む。そしてトライしながら成功率を上げていくことができれば、今取り組んでいることは非常に価値のあるものになる。

 

Lineup

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