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横浜F・マリノスを中心に、サッカーの奥深さ、戦術の面白さを伝えたい

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2023J1第9節 ヴィッセル神戸vs横浜F・マリノス プレビュー

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About Them

位置づけ・目標

昨季はまさかの残留争いに巻き込まれたタレント軍団。しかし、後半戦のみの成績でいえば優勝を狙えるほどだっただけに、その延長線上にある今季ここまで首位を快走しているのは、実は驚くことではないのかもしれない。

例年に比べると静かな冬を過ごしたものの、センターバックの本多、中盤の齊藤や井出、スーパーサブのパトリッキら即戦力として獲得した選手が序盤戦から試合に絡むどころかチームを引っ張る活躍しているところをみると、今冬の編成は成功だったのだろう。

スタートダッシュに成功したこともあり、今季のゴールとしてクラブ初のリーグ優勝も見据えている。いや、その夢はこのマリノス戦に勝ってはじめて現実味を帯びてくるのかもしれない。

 

どんなサッカーをしている?

神戸を紐解く上で重要なのは、メンバーを固定していること。今季リーグは8戦こなしているが、ほとんど入れ替えをしない。同じユニットで練度や対応力を高めたい意図を感じる。

ボール保持は、4-2-3-1と表記するのが自然だろう。最前線の大迫めがけてロングボールを放り込み、セカンドボールをモノにして速く攻める。大エース・大迫の強さを活かした策である。

逆に縦幅をコンパクトにしてくる、すなわちセカンドボールの回収が難しくなるチーム相手には、横幅を使って動かしていく。具体的には、サイドバックの酒井と初瀬がどちらも精度の高いボールを蹴れることを活かし、対角線のサイドチェンジを多用する。特に、右サイドハーフに入る武藤は、対面のDFとの空中戦に滅法強いため、サイドチェンジのボールを収めることができる。サイドチェンジした後はアーリークロスが多い。酒井・初瀬というキックの名手と大迫・武藤というヘッダーを擁するのだから、かなり鋭利な武器である。

逆に非保持は、4-2-4でセットしたところから目の前の相手を積極的に捕まえていく。武藤、汰木のサイドハーフセンターバックに対してプレッシャーをかけるシーンはしばしば見受けられる。

前線でプレススイッチが入ると、後方のサイドバックボランチが呼応して人を捕まえに行くのだが、ここは状況や相手によって出る/出ないの判断を下している。様々な局面においてチームとして明確な約束事があるというよりは、各人がピッチ上で下す判断に委ねられている割合が大きい。

そして攻守両面でこのチームを下支えしているのが、新加入のトップ下・井出遥也。たとえば攻撃では、左サイドに流れて汰木のサポートに入り、+1を作る。また状況を見て、速攻ではなくゆっくり保持することが優先されると判断した際には、キープして時間を作る。逆に守備では、大迫が守備負担を軽減されておりプレッシングにいく頻度に制限がある反面、井出がアンカー封鎖しながらプレスのスイッチを入れるなどしている。

タレント軍団に身を置く中で黒子に徹する。間違いなく神戸のキーマンは彼。しかし、井出の献身的な動きを90分続けるのはさすがに不可能のようだ。試合よって時間帯は若干前後するものの、6~70分で必ず途中交代する。

井出に替わって入る佐々木大樹を右サイドに据え、武藤が2トップの一角に入るのがお決まりのパターン。後半は、よりゴールに向かって直線的になるのが特徴である。前半のようなコンパクトさは失うが、ダブルボランチのカバー範囲の広さがそれを許容し、その結果殴り合いの様相を呈することが多い。

 

Point of This Game

強引さを捨て、慎重に

ボールを保持し、相手を押し込むことで主導権を握るマリノス、むやみにボールを取り上げることにこだわらない神戸。ケヴィンがよほどの奇策を仕掛けない限り、マリノスがボールを保持する時間が長くなるのは必然だろう。

立ち上がりこそマリノスセンターバックに武藤や汰木がプレスをかけてくることがあったとしても、10~15分ごろには4-4-1-1の縦幅コンパクトなブロックに落ち着く。マリノスボランチサイドバック、前線をマンツーで捕まえ、たまに大迫が奪いに行く素振りを見せるだけで基本的にセンターバックは放置してくる。

たしかに同様にボールを保持する新潟相手には、4-2-4でセットしたところから前線4枚が積極的に相手センターバックを捕まえにいったが、逆にその裏を突かれ、サイドバックの手前、つまりダブルボランチ脇のスペースを頻繁に使われた。これに対し、4バックとダブルボランチの6枚で対処することで、致命的なピンチには至らなかった。しかし、新潟戦のソレをそのままマリノス相手にぶつけてくるかどうかは別問題。鹿島戦ではスローテンポでゲームを進めようとしたように、速く攻めるのが得意で、かつ個の能力での対処が難しい相手に対して、速く攻め続けられることはさすがに許容しない。

そうなれば、マリノスとしては今季取り組んでいるスローテンポのポゼッションの進捗が試されることになるが、ホーム鹿島戦、横浜FC戦の2試合の前半に近い様相を呈することは間違いない。決して相手を圧倒するようなゲームではなく、一見苦戦を強いられているように感じるだろう。

焦れてはいけない。横浜FC戦の前半は、焦れて、良くない奪われ方をしたところからあわやのピンチを作られた。あの試合では無失点で済んだものは、神戸には通用しない。前線の打開力・決定力は段違いである。特に構造上放置されるセンターバックからの配球は注意しなければならない。我慢比べだ。

その中でのポイントは、ウイングとサイドバックの距離感にある。特に右サイドの水沼と山根がコンビを組むのは、3試合目になるが、少しずつ互いを知り、要求しながら良化する過程は楽しみ以外の何物でもない。

先行逃げ切り型の両チーム。手段は保持ベースと非保持ベースで違えど、先制点を奪って相手を心理的に追い込み焦らせたところで、交代策によって致命傷を与える。実はゲームプランがかなり似通っている。先制点がいつ、どちらに入るか。

個人的な願望を言うならば、あまり早く試合が動いてほしくない、、

 

Lineup

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